日本で人手不足の業界は? なぜそうなるのかや人手不足の会社の特徴も紹介します
近年企業の間で人手不足が深刻化しています。
しかし、全ての業界が一律で同程度の人手不足に陥っているわけではありません。
実は、人手不足が特に深刻化している業界が存在するのです。
この記事では、日本の人手不足の業界についてその背景にある日本の現状に触れながら解説します。
目次
人手不足の業界は? なぜそうなるのかを日本の現状と併せて解説します
女性が人手不足の業界は?
人手不足の原因は業界だけでなく会社にあることも! 人手不足になる会社の特徴は?
【まとめ】業界ごとの人手不足の原因を見極め対策しましょう
人手不足の業界は? なぜそうなるのかを日本の現状と併せて解説します
人手不足の業界は具体的には「建設業」「物流・運送業」「ホテル業」「飲食業」「情報サービス業」があります。
どれにも共通して「少子高齢化による労働者人口減少」が挙げられます。その他個別の理由について、下記で詳しく説明していきます。
建設業
建設業界の人手不足は業界の中でも深刻です。2021年の調査によると、正社員の不足率は57.5%と51業種の中で最も高い数字となっています。1995年以降、建設業の就職率は下降し続け、特に20~30代の若者層は2010年までの間に7割も減少しており、2025年には労働人口が約90万人不足するとまで予測されています。
人手不足の要因には、「肉体労働かつ給与水準が比較的低い」「建設業の需要拡大」が考えられます。
建設業は長時間屋外や高所で肉体労働をする、残業が多い、週休2日制の採用が少ないといった厳しい労働環境の上、給与水準は他の業種に比べて低めなため若者に敬遠されています。
しかしそのような状況に反して建設業の需要は拡大しているのです。国土交通省の「令和4年度建設投資見通し概要」によると、2015年頃から建設投資額は右肩上がりとなっており、70兆3,200億円となる見通しであり、そのうち民間投資額が44兆9,800円と全体の64%占めています。このように民間で建設業の需要が高まっているのですがそれに対して人材供給が間に合っていないという実情があるのです。今後も需要はしばらくの間あがり続けることが予測できますが、このまま需要と供給がアンバランスの状態が続けば作業員一人当たりの負担が増加し、人離れに発展しますます人手不足が進行していくでしょう。
物流・運送業
コロナ禍により需要が高まったECサイトなどネットショッピングの普及により物流・流通業は需要が急増しています。しかし、ドライバーの高齢化や若手の人手不足が顕著な業界でもあるのです。若手の人手不足の背景には、建設業と同じく長時間労働や低賃金が考えられます。
配送する荷物の増加により労働は長時間化する傾向にあり、加えて再配達になる場合もあるためドライバーにかかる負担は大きいです。ネットショッピング需要の増加により配送荷物数は増えているものの配送料を抑えているため業者に入る報酬は多くないため、人手不足の現状が続いています。
国としてもこのような現状を打開するために規制緩和によって新たに配送業者は参入しやすい政策を打ち出しましたが、却って「多重下請け構造」を生み出す温床となってしまっています。
ホテル業
ホテル業界も人手不足が深刻な業界であり、帝国データバンクの調査によると、旅館・ホテルの人手不足割合は6か月連続で業種別トップになっています。コロナ禍で旅行需要が減少となったことにより一時は人手過多になっていたホテルもあるほどでしたが、2023年5月から新型コロナウイルスが5類に移行になったことにより、徐々に旅行需要が増加してきました。しかし、その分また人手不足が顕在化してきているのです。
ホテル業界は離職率が高いため、人手不足に陥りやすい業界と言えます。
夜勤や中抜けシフトなどホテルならではの特殊な働き方を強いられるため、その働き方になじめなかったり長時間労働がきついという理由から離職する人が多いです。また、基本的にシフト制で働くためカレンダー通りの休みを取れず、大型連休や年末年始は繁忙期なので積極的に出勤しなければいけません。そしてそれほど忙しいにも関わらず、労働に対して給与が低いため、離職する人が後を絶たないのです。
飲食業
2022年の帝国データバンクの調査によると、飲食業の人手不足は65.1%とトップクラスであり、人手不足が深刻な業界の一つと言えます。
飲食業の人手不足の原因は「賃金の低さ」「研修時間の短さ」「労働時間の長さ・仕事量の多さ」などが挙げられます。
厚生労働省の調査によると、産業別の月給で「宿泊業・飲食サービス業」は男女ともに約21万人ともっとも低い数値であることがわかっています。賃金の上昇率も緩やかでピークとされる45歳から50歳を境に下降しており、経験を積んでも賃金の大幅な向上が難しいことは明白です。また、個人店や小規模店は忙しいために覚えなくてはいけない業務が多いにも関わらず新人スタッフがマンツーマンの指導を受けられるのは勤務初日だけというケースもよくあります。そのために仕事についていけず、モチベーションが下がり、退職へ繋がることも多いのです。加えて休憩時間中でも店が忙しい場合は現場に戻らなくてはいけなくなるため、あらかじめ定められた休憩がとれないことも多いです。経営者の場合は店を開けないと収入が止まってしまうため、休日が少ないケースもよくあります。そのような労働時間の長さ、低賃金のわりに従業員一人一人の受け持つ仕事量は多く覚えなくてはいけない業務も多いため、わりに合わないと感じるスタッフも多いです。
女性が人手不足の業界は?
ここまで性別問わず人手不足が続いている業界を見てきましたが、特に女性の人手不足に悩んでいる業界は何があるのでしょうか。ここでは特に女性の働き手を必要としている業界について説明します。
IT業
日本のIT業界も女性の人材不足が問題となっている業界の一つです。
日本は女性教育においてまだまだ「文理分け」の慣習が抜けていない傾向があり、文系出身者の多い女性は理系職であるIT業界に参加しづらいのです。
また、労働時間が長いことも子育て中の女性などにはネックになっています。
家事代行・ハウスクリーニング業
家事代行・ハウスクリーニング業は主に一人暮らしや子育て中の女性が利用しています。訪問型の家事代行業においては、ユーザーから「自身と同じ女性に作業してもらった方が安心できる」という意見が多いため、女性人材の需要が高まっています。
人手不足の原因は業界だけでなく会社にあることも! 人手不足になる会社の特徴は?
業界ごとに人手不足に様々な要因があることはわかりましたが、人手不足の原因が業界ではなく会社自体に存在することもあります。ここでは人手不足の会社の特徴を2点説明します。
勤務時間が長い
ブラック企業という言葉はしばしばニュースなどで話題になりますが、このブラック企業には共通して仕事の拘束時間が長いという特徴があります。
労働基準法によると月45時間以上の残業は違反とされますが、それを守らない企業も存在します。また、仮に時間通りに従業員を家に帰したとしても家で続きの業務を強いる場合もあります。このように仕事に追われるせいで、耐えきれず退職する人も増えていき、慢性的な人手不足になっていきます。
多様な価値観へ対応しきれていない
日本においては、昔は終身雇用が当たり前で新卒で入った会社に定年まで勤めるのが普通でした。しかし、現在では転職が当たり前となっているため、従業員は労働条件などを理由に気楽に現在の会社を辞めるようになりました。以前は企業都合により転勤の可能性がある企業に勤めていたけれど、子供が生まれたタイミングで自身が転勤を望んだ場合にのみ転勤が発生する企業に転職したという人も多いです。
すでに一部の企業は優秀な人材の流出を防ぎ優秀な人材を獲得するために、企業都合の転勤撤廃を宣言したり、フレックスタイム制を導入するなど働く場所や時間の選択を社員に委ねたりするなど多様化する働き方へ対応を進めています。時代に対応し社員が働きやすい環境を整えていない企業は人材にとって魅力的には映りにくいため、人手不足に陥りやすいです。
【まとめ】業界ごとの人手不足の原因を見極め対策しましょう
いかがだったでしょうか。
上記で説明したように人手不足は業界ごとに様々な要因があります。
しかし業界問わず自社に人手不足の原因がある場合もあります。
自社で人手不足が生じている場合はその理由を業界の視点や制度の視点からよく考え、改善するように努めましょう。
この記事へのコメントはありません。