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日本におけるゾンビ企業とは? その定義やなぜ潰れないのかも解説します

コロナ禍において支援金の恩恵を受けて所謂「ゾンビ企業」が増加しています。

この「ゾンビ企業」はバブル崩壊時に注目を集めましたが、近年再度物議を醸しているのです。

本記事では、「ゾンビ企業」について改めて解説をすると共に、ゾンビ企業が潰れない理由、ゾンビ企業と呼ばれる大企業の特徴について解説します。

ゾンビ企業とは? その定義の変遷を日本のバブル崩壊から追って説明します

「ゾンビ企業」とは、債権の利払いがままならず経営状況が厳しいにもかかわらず、銀行の追加融資や政府からの支援によって存続し続けている企業を指します。
この呼称は、日本においてバブル崩壊後、経済が破綻した「失われた10年」を分析する際に、経済拍車や批評家、そしてメディアが使い始めたとされています。バブル崩壊後の銀行は多額の不良債権を抱えており、処理を無理に行うと経営が破綻する恐れがありました。そこで、不良債権問題を先送りにするために再建の見込みがない企業に「追い貸し」を行ったのです。そしてその後の2008年のリーマンショックや2020年以降新型コロナウイルスによる政府支援を受けている企業に対してもこの呼称が使われるようになりました。
また、この定義はマクロ経済学の視点では「生産性の低い企業」政治的な視点では「雇用を確保できない企業」など立場によっても少し異なっています。帝国データバンクは「設立10年以上で、3年連続でインスタント・カバレッジ・レジオが1を下回る(本業の収益より利息等の支出が多い状態)」と定義しています。

ゾンビ企業はなぜ潰れない?潰すべきという主張とそれに対する反論はこちら

帝国データバンクの調査によると、2022年11月時点で判明している21年度のゾンビ企業数は全国で約18.8万社であり、全体のゾンビ企業率は12.9%と2年連続で上昇していることがわかりました。つまり10社のうち1社以上がゾンビ企業となっているのです。
それではゾンビ企業はなぜ潰れないのでしょうか。

ゾンビ企業が潰れない理由

帝国データバンクは「ゾンビ企業数の増加は、コロナ禍で収益、財務内容の悪化した企業がコロナ関連融資によって延命されていることが要因だろう」と分析しています。現在は国からの持続可能給付金を得ているがゆえに、潰れずに残っているゾンビ企業が増加しているのです。このように国が企業の支援を行っている理由の一つとして、政治的な理由が絡んでいます。企業の倒産が急増するほどの経済危機に直面した時に政治家が地元企業を見捨ててしまうと、地本の有権者から不満を抱かれ票田が無くなってしまう可能性があります。そのため支持率に影響が出ないようにするために給付金制度があるとも言えるのです。
また、ゾンビ企業が潰れない要因の一つとして銀行の内情が関わっています。銀行員は融資を担当した企業が異動前に倒産してしまうとその責任を追及されてしまい、出世の道が閉ざされてしまうケースが少なくありません。そのため銀行員は担当する企業がなるべく潰れないようにデータの見え方を意図的に変えたり、上司を説得できるように資料を恣意的に書き換えたりしてその企業に融資できるように立ち回ることが多々あります。また銀行全体としても、地元の有力企業や大手企業などが潰れてしまうと打撃を受けてしまうため、追加で融資を行うこともあります。

ゾンビ企業を潰すべきか否か

「ゾンビ企業が日本の健全な経済成長を阻害している」という声は産業界全体で根強いです。資本主義においては、自由競争こそが経済を発展させるものであると考えられているため、市場原理に従って、事業が上手くいかない企業は市場から淘汰されるべきだといわれているのです。

しかし、ゾンビ企業を潰すべきという主張には反論もあります。
市場原理に任せていると寡占化企業に市場が支配されてしまうことが充分に考えられ、市場が停滞してしまう可能性があるのです。市場原理は万能ではないため、必ずしも利用者にとってベストな状態になるわけではないのです。また、ゾンビ企業は「ゾンビ」という呼称から2度と業績が回復することはないと考えられるかもしれませんが、公的支援を受けることにより再生する可能性もあります。信用がないため資金繰りに奔走しているベンチャー企業など、技術力はあるものの金銭面で悩みを抱えている企業はたくさんあります。優良な事業や優れたノウハウを行っている企業を倒産させてしまうことは日本にとって損失であり、経済的な支援を行うことは日本のためにも有効な手立てとも言えるのです。

更に、ゾンビ企業を市場から撤退させた場合、その企業の雇用者は路頭に迷うことになってしまい、生産設備なども無駄になってしまいます。ゾンビ企業を撤退させたあとは、市場効率の高い企業と今は使われていない生産設備が残ることを考えると、失業者の生産性と使われていない生産設備の生産性はゼロになるため、平均の生産性はむしろ低下することが考えられます。

ゾンビ企業は中小企業だけではない? ゾンビ企業と呼ばれる大企業の特徴は?

ゾンビ企業には中小企業が多いと言われていますが、大企業でもゾンビ企業と呼ばれている企業は存在します。ここでは現在ゾンビ企業と呼ばれている大企業や今後ゾンビ企業に陥りそうな大企業の特徴について紹介します。

1. 投資収益率が低下している

財務指標を見ることで、ゾンビ企業化がどの程度進んでいるのかがわかります。投資した金額に対して利益が上がっておらず、投資収益率が低下しているようであればゾンビ化が進んでいると言えます。加えて不良資産が膨らんでいたり、在庫を多く抱えているようであればゾンビ化していると言えます。

2. 需要が減ることが予想される地方企業

今後需要が減ることが予想される地方の企業もゾンビ化しやすいと言えます。例えば、百貨店やホテルや旅館、ローカル展開する食品メーカーなどが該当します。こういった企業は大きな設備や在庫を抱えているところが多いです。一度ホテルや工場など大きな設備を抱えていると維持コストがかかってしまいます。そして地方の場合、過疎化が進むと人口や観光客が減少し、業績が悪化しやすい傾向にあります。

3.老舗企業

設立してから日が浅い企業はゾンビ企業化する前に市場から撤退していくケースが多いです、しかし、設立してから40年以上が経つ老舗企業は取引先の金融機関が企業が倒産しないように融資などの延命措置を続ける傾向にあるため、ゾンビ化しやすいのです。

【まとめ】ゾンビ企業は今後も増加する?

いかがだったでしょうか。

コロナウイルスは5類化されたため、今後企業への経済的支援は減っていくでしょう。そのため、今後ゾンビ企業は減っていくことが予想されます。

しかし、ゾンビ企業が一気に倒産すると急激な景気後退を招く恐れもあるため、政府には慎重に判断することが求められます。

また、優れた技術やノウハウを持っているゾンビ企業の倒産は日本にとっても大きな損失のため、M&Aなどによって残していくことが重要です。そのため、今後はM&Aがしやすい環境作りも必要となってくるでしょう。

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